Nightstand Buddhists


ナイトスタンド・ブディストとは

仏教に興味を持っている人々が、人生の充実を求めるために仕事を終えて家へ戻り、夕食を済ませ一息ついたら、書斎や寝室、自分の部屋で、ナイトスタンドの小さなやさしい灯りをともし、ブッダの教えにふれ、ひとり静かに自らを見つめます。こんな人々をアメリカでは「夜の電気スタンド仏教徒」とユーモアを交えて呼んでいます。

宗教的な教理に基づく信仰ではなく、自分が納得できるものを探し取り入れ実践していく。これが現代社会における仏教の新しい形であるのかもしれません。ご一緒にNight-stand Buddhistsを体験してみませんか!

 ●携帯サイト限定 法話掲載

毎週末の金曜日、法句経などから携帯サイト限定で、小さな一句を更新します。静かな夜のひと時に、瞑想や坐禅、また小さな読み物としてどうぞ参考にしてください。底本は岩波文庫『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元訳より。
監修:花園大学教授 佐々木閑先生 担当:羽賀浩規
以下に武蔵野大学教授田中ケネス先生の紹介文を掲載いたします。 

● ナイトスタンド・ブディスト 終了
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2009年10月16日(金)より始まったナイトスタンド・ブディストは2014年7月25日(金)をもちまして、ダンマパダ終了となりました。
5年の長きにわたり、ご高覧いただきまして、誠にありがとうございました。

しばらく充電の後、2014年秋口には新連載を予定しております。
どうぞお楽しみに!

仏教と世界 伸びるアメリカ仏教とナイトスタンドブディスト

『アンジャリ』 NO.11 2006/6 親鸞仏教センター(真宗大谷派)より
田中ケネス(武蔵野大学教授)

世界で仏教の一番多く集まっている都市は、バンコクでも京都でもなく、何と、ロサンゼルスである。現在、ロスには東南アジア、チベット、中国、韓国、ベトナム、日本等からの八十を越す宗派が共存しており、多数の仏教宗派が西洋の超大国でこのように見られることは非常に興味深い現象で、アメリカにおける仏教の発展を著しく示していると言える。

さて、このアメリカでの仏教の伸びは、アジアからの仏教移住者の増加だけによるものではなく、そのうち数十万人は、実はアメリカ生まれの改革者によるものである。例えば、有名な映画俳優のリチャード・ギアはダライ・ラマ師の友人で、熱烈なチベット仏教徒であり、ティナ・ターナーという一流アフリカ系歌手は、熱心な創価学会(SGI-USA)信者である。大学の場においても仏教への関心が相当な高まりを見せていて、全米のほとんどの大学で、仏教に関する授業が設けられている。また、ハーバード、プリンストン、コロンビア、ミシガン、スタンフォード、カリフォルニア等という伝統のある大学では充実した仏教学専攻課程も設置されている。1996−97の二年間で、北米で仏教に関する七十九の博士号が出ており、これは、日本を上回る数字である。注1

それでは、アメリカにおける仏教徒の人口はどれくらいであろう。専門家の多くは、役三百万人と見ている。これは、アメリカの人口の約1パーセントに当たる。しかし、これに正式な仏教徒ではなくても仏教に何らかの強い影響を受けている人たちを含めれば、この数字は、三百万の数倍にまで跳ね上がり、ある調査によれば、約二千五百万人という驚くほどの数となっている。注2

さて、問題は、このように「仏教徒」と断言せずに、仏教に興味を持っている人々をどう名付けるかということである。つまり、夜自宅で床に就く前に仏教書を読み、個人的にメディテーションを行うこのような人たちのことである。これらの人々をトマス・トィード教授は「ナイトスタンド・ブディスト」(night-stand Buddhists夜の電気スタンド仏教徒)と、ユーモア的に呼んでいる。注3このナイトスタンド・ブッディストたちの特徴は、一、特定な宗教団体に関わらず、二、自分の「体験」を重視する、という性質を有している。

ナイトスタンドブディストの代表として、私は、かの有名なNBAのバスケットボールのフィルジャクソン監督を挙げたい。彼が仏教の感覚と思想を導入しながら、優勝九回というめざましい成果をあげたことは有名であるが、彼は決して、自分を「仏教徒」であることは断言しないのである。また、禅に惹かれているようなのだが、特定な禅宗の組織に深く関わりを持たず、禅以外の宗教や仏教以外の宗教の集まりにも参加している。

ジャクソン監督もそうであるように、ナイトスタンドブディストたちは、自分が納得できる「聖なる体験」、つまり、スピリチュアリティ(一般的に言われている「霊性」ではない)を強く求めるのである。彼らが仏教に強く惹かれるのは、仏教をキリスト教やユダヤ教のような、いわゆる「宗教」を受けとめず、スピリチュアリティを最も実現可能させる「修行法」をもった宗教であると見ているからである。この修行法とは、主に禅の坐禅と南方仏教のヴィッパサナーとチベット仏教の瞑想というメディテーションを指すのである。

彼らが抱いているメディテーションへの魅力は、精神安定や集中力を求めるところにもあるが、同時に宗教的な教理に基づく信仰という言葉への否定から、実践(practce)への肯定という、パラダイムの変換を象徴していると言えよう。そして、このような実践や体験を重視するナイトスタンドブディストたちは「個人宗教家」(privatizedreligion)という現象を示していると言えるのである。注4

この個人化の原因の一つは、世俗化である。社会宗教学者のピーターバーガー教授によると、この世俗化は非独占化(pluralistic situation)という現象を生むのである。注5この多様的な状況の特徴とは、いままでのように支持者が必然的についてくるという保証はなく、人々はマーケット原理にしたがって自分が納得できるものを求め、それを見つけると、いままでの宗教や宗派を捨てて新しいものを支持することである。

また、この多様的な状況は、地域社会の弱体化や国境が薄くなるグローバル化に伴うもので、これにより人々は精神的にも、所属する団体より自分自身を頼りにすることになり、このような「団体」から「個」という動きが、個人化宗教を促進すると考えるのである。

そして、この個人化宗教には、ある程度の社会の豊さも実は必要とされる。評論家の宮崎哲弥氏も指摘されているように、今日、人々が仏教に惹かれる原因は「貧・病・争」に契機するのではなく、比較的豊かな先進国の生活環境にあるのである。注6つまり、仏教の真価が、ある程度豊かな生活環境に暮らす人々に発揮されつつある。そして現在、アメリカに浸透している仏教が、実にこの個人化宗教の条件を満たしている。したがって、今後も欧米(ヨーロッパでも仏教は伸びている)では、ナイトスタンドブディストの数が増え、新しい仏教の芽が開いていくことが予測される。

注1 Appenndix B,inD. Willams and C.Queen eds.,AmericanBuddhism(Curzon Press,1999)pp.307-311
注2 RobertWuthnow and WendyCage,”Buddhists and Buddhism in the United States:The Scope of Influence,” Journal of the Scientifrc Study of Religion Vol,43  No3(Sept.2004):363-380.
注3 Thomas A.Tweed, “Night-stand Buddists and Other Creatures,” in American Buddism,P.74.
注4 Kenneth K .Tanaka, “ Epilogue: The Colors and Contours of American Buddhism,” in Charles Prebish and Kenneth Tanaka, eds. The Faces of Buddhism in America (Univ. of Calif. Press, 1998),pp.
注5 Peter Berger, Sacred Canopy (Doubleday, 1966),pp.134,137.
注6 Tsukiji 築地本願寺新報、2005年10月、5頁。

【田中ケネス 経歴】
昭和22年(1947)生まれ。日系二世の両親と渡米。スタンフォード大学卒業。カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了。東京大学大学院博士課程修了。哲学博士。現在、武蔵野大学教授、武蔵野大学仏教文化研究所所長。アメリカ仕込みのユーモアで、楽しく仏教を説く。フォークソングの仏教的解釈など、ユニークな視点の活動も行なっている。

 

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